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横浜地方裁判所 昭和63年(ヨ)465号 判決 1989年5月30日

債権者 越智康雄

右訴訟代理人弁護士 荒井新二

同 前川雄司

同 佐伯剛

同 星野秀紀

同 陶山圭之輔

同 小野毅

同 伊藤幹郎

同 星山輝男

同 小島周一

同 坂本堤

同 堤浩一郎

同 船尾徹

同 山川豊

債務者 千代田化工建設株式会社

右代表者代表取締役 玉置正和

右訴訟代理人弁護士 小倉隆志

主文

債務者は債権者に対し昭和六三年六月二一日から本案の第一審判決の言渡しに至るまで毎月二〇日限り一か月金四五万七五五七円の割合による金員を仮に支払え。

債権者のその余の申請を却下する。

訴訟費用は債務者の負担とする

事実

第一当事者の申立て

一  債権者

1  債権者が債務者に対し雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。

2  債務者は債権者に対し昭和六三年六月二一日から本案判決確定に至るまで毎月二〇日限り一か月金四五万七五五七円の割合による金員を仮に支払え。

3  訴訟費用は債務者の負担とする。

二  債務者

1  本件申請を却下する。

2  訴訟費用は債権者の負担とする。

第二当事者の主張

一  申請の理由

(被保全権利の存在)

1 債権者は、昭和三九年一一月債務者会社に入社した。

2 債権者は、債務者会社から、昭和六三年三月二〇日に金四九万一八一九円、同年四月二〇日に金五二万六六三三円、同年五月二〇日に金三五万四二二〇円の各賃金の支払いを受けているので、右三か月の平均賃金は月額金四五万七五五七円となる。

(保全の必要性)

1 債権者は、債務者会社から支払いを受ける賃金が唯一の収入である。

2 債権者の家族は、妻順子(四五歳)、長男俊明(高校二年生)、次男秀樹(高校一年生)、義母貞(六九歳)である。

二  申請の理由に対する認否

債権者主張の申請の理由については、債務者において特に争っていない。

三  債務者の主張

(本件仮処分申請の利益の不存在)

債権者は、本件仮処分申請後新たに神奈川県地方労働委員会に昭和六三年五月三〇日受付の不当労働行為救済申立をなし、昭和六三年(不)第八号事件として同委員会に係属した。そこで求める救済内容は、「被申立人は申立人に対する解雇を取り消し、同人を原職に復帰させ、昭和六三年五月二一日から原職に復帰させるまでの間の賃金相当額に年五分の割合による金員を加算して支払わなければならない。」というもので、本件申請の趣旨と同一である。債権者が何故に今頃になって地労委に右救済申立をするのかは、債務者会社にとって知る由もないが、ともかく救済申立は不当労働行為事件しか扱わないのであるから、本件解雇の理由を不当労働行為一本に絞ったことだけは明らかである。

ところで、第二鳩タクシー事件(最高裁大法廷判決昭和五二・二・二三)において、岸盛一裁判官の反対意見中に次の通りのことが述べられている。即ち、「我が国の場合、不当労働行為としての解雇についてはこれを私法上無効として司法裁判所において争い、解雇の無効を前提として得べかりし賃金の請求等をすることができると解されているが、米国においては、不当労働行為としての解雇が私法上無効だという考え方自体がなく、不当労働行為に対する救済はすべて行政機関である全国労働関係局の救済命令にゆだねられ、司法裁判所は同局が出した救済命令を司法審査する場合を除いては、これに関与しないものとされている。」

思うに、米国で右述のような法制度をとったのは、労働者が救済を得るために司法裁判所と行政機関と二つの国家機関を利用できるのは、一般市民に比して優遇されることになり、法の下の平等に反するから、との考え方によるものである。しかして法の下の平等は日本国憲法も第一四条に明定するところである。ところで、本件についてみると、同一案件について新たに神奈川県地方労働委員会昭和六三年(不)第八号事件が提起されているのであるから本件についてまで審理を求めるのは、法の下の平等に反しており許されないというべきである。これを訴訟法的にいうならば、本件については仮処分申請の利益を欠くというべきである。

(被保全権利の不存在)

1 債務者会社は、債権者に対し、昭和六三年四月二一日、債権者を同年五月二〇日付で解雇する旨予告し、同年五月二〇日平均賃金の三〇日分金四八万四三〇四円を提供して解雇の意思表示をした(以下「本件解雇」という。)。

2 本件解雇の理由は次のとおりである。

(一) 債務者会社の就業規則には次のような定めがある。

「(解雇)

第22条1 従業員が次の各号の一に該当するときは解雇する。

(1)ないし(6) 略

(7) 会社が経営規模の縮小を余儀なくされ、または会社の合併等により他の職務への配置転換その他の方法によっても雇用を続行できないとき。」

また、債務者会社とその従業員で組織する千代田化工建設労働組合(以下単に「組合」という。)との間に締結されている労働協約にも次のような定めがある。

「第76条(解雇)

会社は次の掲げる場合には組合員を解雇する。

(1)ないし(6) 略

(7) 会社が経営規模の縮小を余儀なくされ、または会社の合併等により他の職務への配置転換、その他の方法により雇用を続行できないとき。」

(二) 本件解雇は右の就業規則と労働協約の各定めに基づいて行われたものである。即ち、

(1) 債務者会社が経営規模の縮小を余儀なくされたこと

(ア) 経営規模の縮小

債務者会社は、昭和六二年一〇月一日をもって不採算部門である川崎工場を分離し、これを千代田プロテック株式会社(以下「千代田プロテック」もしくは「プロテック」という。)として子会社化した。右川崎工場は、昭和五四年当時従業員数四六九名であったが、徐々に規模を縮小し、債務者会社が子会社化を策定する直前の昭和六二年四月当時は二六一名にまで縮小されていた。これを更に二〇〇名程度に縮小して分離することは、かなりの規模の縮小である。

企業の目的が自由競争下における利潤の追求にある以上、不採算部門の廃止と採算部門の拡充は必要不可欠であるから、後者の実施がある場合には前者の実施が「経営規模の縮小」に該当しないとすると、前記の就業規則や労働協約の規定をおく意味がないことになる。仮に企業が倒産必至の場合に限って右の定めが適用されるというのであれば、かかる場合にはそもそもかかる定めがなくても解雇は当然になし得るものであるから、これは無用の規定ということになる。

(イ) 余儀なくされたこと

前記のとおり、債務者会社の川崎工場は不採算部門であった。債務者会社としては、同工場を完全に廃止してしまうこともできたが、それでは数百名の従業員の解雇問題が発生する。債務者会社は、その経営理念の一つとして雇用の確保を考えているため、解雇はできる限り回避したかったのである。そこで、同工場を債務者会社から分離し、子会社化して同工場勤務者のうち子会社に必要な従業員に移籍してもらうこととした。右により移籍した従業員の賃金が債務者会社勤務時に比し概ね三〇パーセント低下することとはなったが、これは分離した子会社が競争力を維持して存続するために必要欠くべからざる要件である。そうであるからこそ、右の子会社化と移籍について組合が了承し、移籍後の労働条件について協定を締結するに至ったのである。即ち、

そもそも製缶工場としての川崎工場が計画した設備を全て揃えて完全操業を開始した昭和三六年当時、債務者会社の主な仕事は国内製油所、化学プラントの建設工事であり、その頃のプラントは大型化、運転条件の苛酷化、複雑化の傾向が強く、高温高圧耐食、大型等の条件に耐える当時としては技術的に難しい機器(具体的には圧力容器等)の製作と信頼できる納期での納入が必要となっており、一方、国内には右のような難度の機器類の開発、設計、製作能力をもったメーカーが数少なかったため、このような国内の需要に応ずるべく債務者会社は同工場を設置したのであるが、しばらくの間は、債務者会社の目論見が的中し、同工場は収益を挙げると同時に、プロジェクトの有力なセールスポイントにもなって債務者会社の本業であるプラントの設計、建設を補充する役割を果してきた。

しかるに、その後次第に後発プラント機器メーカーの技術レベルも向上して平準化し、それぞれ化学プラントの分野での技術革新、技術要求に十分対応できるようになってきたため、川崎工場の製品も価格競争の渦中に巻き込まれ、賃金を含む固定経費の割高が災いして、同工場の製品は競争力を失うに至った。しかして、債務者会社は一方では同工場の生産性向上のための新規設備投資を行うとともに固定経費の削減に努めたのであるが、同工場は昭和五〇年前後から毎期一〇億円以上の赤字を出し続け、前記のように遂に債務者会社の不採算部門と化するに至った。

ところで、川崎工場の赤字も、他部門の業績が良好で吸収できる程度であれば、債務者会社全体としての赤字にはならないのであるから許容できるではないか、との考え方もあるかもしれないが、企業が利潤追求を目的とする以上、このような考え方をとることは、絶えず激しい競争に晒されている企業としては、重大な問題でいつまでも許されるものではない。それどころか、債務者会社は石油・石油化学産業用装置(通常これをプラントという。)の設計、建設等の請負を主たる業務としているところ、近時国の内外を問わず需要が頓に減退するにつれて受注も減少し、他方同業他社との世界的規模での競争が激しいこと、更には急激な円高などの理由から、受注確保や諸経費の節約に必死の努力を傾注したにもかかわらず、第五八期(昭和六〇年~昭和六一年)以降毎決算期に別紙「経営指標の推移」のとおり膨大な欠損(赤字)が生じるに至った。

このような状況下で、債務者会社は前記のように、雇用確保のため川崎工場の完全廃止を回避し子会社化した次第であるが、その際の千代田プロテックの将来の見通しとして、従業員規模を二〇〇名体制とし、人件費三〇パーセント減を中心とする固定経費削減の合理化を行うならば、年間約七〇億円の生産規模をもって期待利益を確保し、採算がとれるものと判断した。その結果が移籍者の労働条件の変化となったのである。更に債務者会社は、右移籍後も赤字解消対策を迫られた。即ち、営業強化の一環として、債権者が指摘するように経費節減のため一旦は東京三田に存する賃貸ビルから債務者会社の本店の存する鶴見に撤退させた営業部門を、再び三田のバンザイビル(賃貸ビル)に集結する一方、第二次非常時対策として、右移籍後も更に三二〇〇名(本社二七〇〇名、出向五〇〇名)の従業員を二八〇〇名以下(本社二五〇〇名以下、出向三〇〇名)とする人員適性化策を発表した。しかし、人員を減らすといっても前記の雇用確保の経営理念から、世間にいう希望退職募集を皮切りとする整理解雇という方策は回避し、「企業グループとしての雇用の創出確保に最大限の努力を傾注するものとし、出向拡大、新規移籍、および人材の社外活用等で要員適性化を図る」こととした。これが後記の債権者らのファブリコン移籍の問題に繋がるのである。

(2) 他の職務への配置転換、その他の方法により雇用を続行できないこと

右にいう移籍とは、債務者会社との雇用契約を退職により解消して同時に子会社と新たに雇用契約を締結することである。したがって、当然のことながら対象者の同意を条件とするものである。債務者会社は、移籍者には退職金を支払わなければならないのであるが、賃金低下に対する補償あるいは住宅ローンの一括返済等を勘案し、早期退職自主選択制度を参考にして、特別加算金を加算することとした。なお、前記のように、移籍者の賃金は低下することになるのであるが、それにしても組合が「技能職のモデル賃金カーブは千代田プロテックの競合企業(石川島造船化工機、徳機、寿鉄工および寺田鉄工)の四社平均を上廻り、一部競合大手企業(日立造船、三井造船、月島機械および三菱化工機)の四社平均レベルに近づいてきた。」と述べているように、決して見劣りするものではない。この点からみても債権者が生活が成り立たないという主張に固執するのは理解できないし、債権者と同じ技能職系従業員一六八名が移籍に同意した事実からみても、不自然なのである。因みに、債権者が移籍したとすると月例賃金と特別加算金を加えた退職金はそれぞれ二四万一〇〇〇円と一四三五万七〇〇〇円であったが、月額約六万円の住宅ローン返済額を退職金で一括返済すれば月々の返済は解消され、かつ賃金低下に伴う税、社会保険料の低減をも考慮すれば工夫次第で何とか通常の生活維持は可能であったと思料する。また、これまで述べてきた川崎工場の分離・子会社化とは、千代田プロテックという株式会社を新設して、これに川崎工場の機能を実質的に移管したものであるから、昭和六二年一〇月一日以降は、従来の川崎工場の業務は一切債務者会社には存在しないことになるのは自明の理である。

ところで、債権者は川崎工場に溶接工として勤務し、前記組合もいうところの技能職に属するものである。しかるところ、川崎工場の技能職は他への転籍者六名を除き移籍に応じたにもかかわらず、債権者のみがただ一人、千代田プロテックの賃金では生活が成り立たないことを理由として、移籍を拒否しているのである。したがって、昭和六二年一〇月一日以降は債務者会社と債権者との雇用契約は残存するが、肝心の債権者の仕事がないという矛盾した結果が生ずるに至った。

ここで当然考慮されるべきことは、労働協約や就業規則にいう「配置転換、その他の方法」による「雇用の続行」が事実問題として可能であるか否かである。しかし、残念ながらその結論は「不可能」であった。その理由の第一は、債権者を除く全ての川崎工場勤務の技能職が賃金の減額を受認し雇用を選択して移籍に応じたにもかかわらず、移籍を拒否した債権者に配置転換その他の方法をわざわざ講じてまで、仕事を探し与えなければならない法律上の義務は債務者会社にもともとないからである。もし、そのようなことをすれば、一旦移籍を同意した者も意をひまがえして債務者会社との雇用継続を主張するに至り、収拾のつかない状態になるのは必至だからである。第二の理由は、債権者は千代田プロテックの賃金では生活が成り立たないと主張すると同時に、債務者会社の本店組織において従来と変わりない賃金で働かせろと要求したからである。そうすると債務者会社としては、ますます仕事を探して与えるわけには行かなくなるのはいうまでもないことである。第三の理由としては実際に、債務者会社には債権者に与える仕事は存在しないのである。なにしろ前記のように川崎工場の子会社とは別に、四〇〇名以上の人員削減の必要に迫られていたほどであるから、存在する筈がないことは、債権者も十分承知できたはずである。

かくして、昭和六二年一〇月一日をもって、債権者は前記労働協約や就業規則にいう「雇用続行できないとき」にすでに該当したのである。しかしながら雇用確保を経営理念とする債務者会社は、債権者を別の子会社ファブリコンに出向させ、二度目の移籍のチャンスを与えることとしたのである。

ひるがえって、昭和六二年一一月当時において、昭和六三年三月末における債務者会社より子会社への出向者目標数はファブリコン約一二〇名、アローマネージメントサービス株式会社約四〇名、セントラル千代田株式会社約三五名であったが、債務者会社は全体で二八〇〇名以下の緊急要員適性化対策を打ち出す一方で、従業員の雇用確保実現のため、右の出向者全員に移籍してもらうことにした。移籍の条件は労使交渉の結果、千代田プロテックの場合と殆ど変わるところがなく、組合も千代田プロテックの場合と同様に協定するところとなり、出向者に同意を得る手続を踏んで、昭和六三年三月末日をもって移籍を完了した。

しかしながら、移籍が完了したといっても、出向者全員が移籍に同意したわけではなかった。ファブリコン出向者のうち三名が移籍を拒否し、その中にはまたまた債権者が含まれていたのである。かくて、右の三名は、千代田プロテックの場合と同様の理由で「配置転換、その他の方法により雇用が続行できないとき」に該当するに至った。特に債権者は、これで二回目ということになる。債務者会社はもはや債権者を解雇するほかはないと判断せざるを得なかった。これより先、債務者会社は昭和六二年一二月二四日に、甲第六号証のとおりの内容の職務開発休職制度を組合に提案したが、債権者らの組合内部での反対運動のためか、組合の了承が得られず、実施保留の状態で現在に至っている。債権者は、債務者会社が右休職制度を撤回したかのような主張をするが、それは事実に反する。もし右三月末日までに実施の運びとなっていれば債権者はこの休職制度の適用を受け、解雇の対象者とはならずにすんだ筈である。

3 本件解雇の手続は、次のとおりである。

(一) 労働協約第七七条は、解雇の手続につき次のとおり定める。

「会社は前条により組合員を解雇するときは、原則として三〇日前に本人に予告し、組合に対して次の手続をふまなければならない。

(1) 第一号、第四号、第五号によるとき

予告後すみやかに氏名、理由を通知し、組合の意見を聞く。

(2) 第二号、第三号、第六号によるとき

事前にその氏名、理由を通知し、組合と協議する。

(3) 第八号によるとき

一か月前までにその氏名、理由および条件を通知し、組合と反復協議する。

(関係交渉議事録)

10 第七七条第一号および第三号により会社が組合に行なう通知は、本各号の定めにかかわらず可能な限り前広に行なう。」

ところで、右のような規定は就業規則にはなく、組合の要求によって労働協約に定められたものである。右規定の精神は、要するに組合員を解雇するときは、本人に対する説得や組合の意見聴取を十分行ってからしなければならない、というところにあることに疑問はない。そこで債務者会社は、昭和六三年四月一日以降債権者ら及び組合に次のように対応することとした。即ち、債権者についても、それまで債務者会社は、債権者の仕事が存在しないことにつき、直接話し合ったことがないので、念のため債権者ら各人別に債務者会社が直接面談し、債務者会社に債権者らの仕事が存在しないことを納得させるよう努力することとし、その期間を当初概ね一週間程度とした(実際には二〇日間にわたって行った)。しかして、債権者らがこの期間内に納得せず、債務者会社外に仕事を求めることも拒否するときは、約一か月の予告期間を置いた即時解雇の予告をすることとした。次に組合に対しては、即時解雇の予告後に、十分に組合の意見を聴取、協議する手続をふむこととした。

(二) 債権者との面談の経過

債権者との面談は、四月一日、四日、六日、一一日、一五日、二〇日と六回に及んだ。既に債務者会社は、別件当庁昭和六三年(ヨ)第一五八号事件で、債務者会社に債権者の仕事が存在しないことを疎明したのであるが、右面談に至っても債権者が、債務者会社内に仕事がある筈だとして希望の部署名をあげたので、債務者会社は改めてわざわざ希望部署の部長の意見を聞くなど調査したうえで、その結果仕事が存在しないことを再確認して、その旨債権者に説明した。これに対し債権者は社外出向でもよいとの態度を示したが、賃金は従来の額を下廻らないことを絶対的条件として固執した。このため債務者会社は、さらにわざわざ同業他社や職安の状況を調査したが、そのような受入先を見つけることは至難であることが分り、その旨債権者に説明した。結局従来の賃金額に固執するのは、社外に機会を求めることを拒否するに等しい。なお、この面談において、債権者は債務者会社が仕事を探す義務を負っていると主張したが、債務者会社がかかる義務を負担していないことは多言を要せずして明らかである。

右の面談については、会社は労働組合の申入れに応じて、四月一八日に右組合に途中経過を説明したが、組合からは債権者とよく話合って納得のいくように最大限の努力をしてほしいとの要請がなされるにとどまった。

(三) 労働組合との協議

前記面談の結果、債務者会社は、もはや債権者に理解を求める余地がないものと判断し、四月二一日、五月二〇日付で解雇する旨予告した。債権者を除いた移籍を拒否した他の二名は、四月一五日までの面談で、退職するか他社に就職斡旋を求めるかで解決しそうな情況であったので、なお引き続き面談を継続することとした(この二名のうち、一名は、自ら転職先を見つけて昭和六三年五月一五日に退職し、他の一名は、転職の意思を明らかにしていたところ、たまたま欠員の生じた子会社に、債務者会社の斡旋により移籍することとなり、同月末日に退職した。)。

その後、債務者会社は、前記労働協約第七七条の趣旨に則り、同じ四月二一日に右予告を組合に通知し、右同日、二五日、二七日、五月六日、九日、一一日と計六回にわたり組合と協議した。この間、債務者会社は、組合に対し解雇に至る経緯を説明したところ、組合からは債権者とよく話し合ってほしいと述べるだけで、債権者に対する右解雇予告を撤回せざるを得ないような特段の申し出がなかった。しかして、五月一二日には、「債権者が裁判所に解決を委ねる意思を表明した以上、組合としては、労使協議を継続する意味合いを見い出せ得ない」との理由で、「現在のような状況における労使協議は終了とせざるを得ないと考えている」と申し入れたので、債務者会社もこれを了承し、ここに協議は組合の申入れにより終了となった。

4 以上のとおり、本件解雇は、就業規則(労働協約)所定の解雇事由に該当する事実が存在し、かつ労働協約所定の手続を履践してなしたものであって有効であることは明白である。

よって、債権者の本件仮処分申請はその被保全権利が存在しないものである。

(保全の必要性の不存在)

前記のとおり、本件解雇に至ったのは、債権者が債務者会社の申し出た移籍又は他への就職を拒否したためであり、債権者がこれに応じていれば、その経済生活を十分に維持し得たものである。したがって、仮に本件解雇により債権者の生活が維持できないとしても、それは債権者が自ら選んだ途である。これを仮処分をもって保護すべき利益ないし緊急性は存しない。

四  債務者の主張に対する認否・反論

1  認否

(一) 債務者の主張(本件仮処分申請の利益の存否について)のうち、債権者がその主張のような不当労働行為救済申立てをしたことは特に争わないが、その主張は争う。

(二) 債務者の主張(被保全権利の不存在)

(1) 1のうち、その主張のようなそれぞれの意思表示がなされたことは認めるが、昭和六三年四月二一日の解雇の意思表示は解雇の予告ではなく、労働基準法に基づく確定的な解雇の意思表示であり、同年五月二〇日の解雇の意思表示も同法に基づく解雇予告手当付きの即時解雇の意思表示である。

(2) 2(一)の事実は認める。

2(二)(1)(ア)のうち、債務者会社が昭和六二年一〇月一日をもってその川崎工場を分離し、これを千代田プロテックとして子会社化したことは認めるが、その余の事実と主張は争う。

2(二)(1)(イ)のうち、移籍に応じた従業員の賃金が債務者会社の賃金に比し、概ね三〇パーセント低下となったこと、債務者会社がその主張のような第二次非常時対策を発表したことは認めるが、その余の事実と主張は争う。

2(一)(2)のうち、移籍についての主張、川崎工場の技能職系従業員一六八名が千代田プロテックへの移籍に応じたこと、債権者が川崎工場に溶接工として勤務し、いわゆる技能職に属すること、債権者が他への転籍者六名を除いてただ一人千代田プロテックへの移籍を拒否していること、その主張のようなファブリコン、アローマネージメントサービス、セントラル千代田への移籍が行われたこと、ファブリコン出向者のうち三名が移籍を拒否し、この中に債権者が含まれていたことは認めるが、その余の事実と主張は争う。

(3) 3(一)のうち、その主張のような労働協約の定めのあることは認めるが、その余の事実と主張は争う。

3(二)、(三)の事実と主張は争う。

(4) 4の主張は争う。

2  反論

(就業規則所定の解雇事由の不存在)

(一) 債務者は、債権者につき、就業規則二二条一項七号所定の解雇事由が存在すると主張するが、もともと本件解雇は、債権者に何らの責任がないにもかかわらず一方的になされたものであるから、いわゆる「会社都合の解雇」である。したがって、右就業規則所定の解雇事由はより厳密に、かつ客観的に確定し得るものでなければならず、その適用(運用)も当然厳格でなければならない。そうだとすると、右にいう「経営規模の縮小」にしても、本来は、経営規模を縮小し、かつ債権者らを解雇しなければ、債務者会社が重大な経営危機に陥り、企業の維持・存続が困難となり、企業も労働者も共倒れになってしまうという事態のもとでの「経営規模の縮小」でなければならない。

ところで、本件解雇は右のような事態のもとでなされたものではなく、また、将来経営危機に陥る危険を避けるために企業体質の改善・強化を図るいわゆる「予防型」の解雇ではなく、むしろ、より高利潤の確保を図るためになされたいわゆる「攻撃型」の解雇といった性格を有している。

債務者は、一応「経営規模の縮小」を云々してはいるものの、債権者を解雇しなければ企業の維持・存続が著しく困難となる等、本件解雇の合理的必要性は存在せず、したがって、本件解雇は違法無効なものである。

(二) 更に、右就業規則所定の解雇事由は、次のように解すべきである。

右就業規則所定の「経営規模の縮小」と「他の職務への配置転換その他の方法によっても雇用を続行できないとき」とを切り離して解釈すべきものではない。「経営規模の縮小」だけで、いわゆる会社都合による解雇の合理的必要性を認めることはできず、それでは、いわゆる会社都合による解雇が常に会社側の一方的事情によって容易に肯定され、解雇される労働者の事情が全く無視されてしまうこととなる。即ち、「経営規模の縮小」によって生じた事態に対し職種転換、配転、出向等の方法・措置を採る余地・機会がなければならず、これがないまま「雇用続行不可能」ということは許されない。つまり、右両者の間には因果関係が存在しなければならず、これも合理的な時間的近接関係が存在しなければならない。

かかる因果関係が肯定されたうえで、本件解雇の合理的必要性が、「経営規模の縮小」の性格、本質、その実施状況等に照らして検討されなければならない。換言すると、「経営規模の縮小」を債務者会社が推進した結果、債務者の主張する経営規模の縮小=川崎工場の千代田プロテック化が実現し、それから七か月経過して後なされた本件解雇の合理的必要性が存在しなければならない。

(三) 本件解雇は右の点についての検討をなすことなく行ったものである。即ち、

(1) 債務者は、右「経営規模の縮小」とは、昭和六二年一〇月一日、川崎工場を千代田プロテックとして分離・子会社化したことであるといい、この時点で「雇用を続行できないとき」に該当したとし、更に昭和六三年三月末日、債権者がファブリコンへの移籍を拒否した時点で「配置転換その他の方法によっても雇用を続行できないとき」に該当するに至ったと主張する。

そうだとすると、右の分離子会社化された時点において、債権者につき「他の職務への配置転換その他の方法によっても雇用を続行できないとき」に当たるか否かを事実に即して検討する必要がある。

(イ) 債務者会社は、昭和六二年八月二一日の労使間定例幹事会において、分離・子会社化されるプロテックの経営規模について、「基本的には二〇〇名で発足したい。……総合職五〇名と技能職一五〇名、合計二〇〇名という考えのなかで……、それ以上の場合は新会社の経営圧迫の要因にもなり、……他の仕事をお願いせざるを得ない」と明言している。

また、同月二七日に開催された定例労使協議会において、債務者会社は「技能職の対象者一七五名のうち移籍希望者一五二名、本社希望者一名、未確認者一八名、が全員移籍を希望するならば、移籍希望者二一七名になり」、二〇〇名を超えると「新会社の体力に大きく影響するために選考せざるを得ない」と明言している。

右の事実から、債権者と同じ技能職についてみれば既に一五二名が移籍を希望しており、プロテックへの移籍をも拒否していた債権者に対してプロテックへの移籍を強要する事態はなかったことは明らかである。

(ロ) ところで、この時点におけるプロテック移籍拒否者は、債権者を含めて前記「雇用続行不可能」の事態にないことは、以下の事実と経緯をみると明らかである。

昭和六二年八月四日における団交において、債務者会社は、プロテックへの移籍対象者で「合意しなかった者はその後遅れて異動を行うつもりである。具体的異動は現場の建設作業を中心とした業務内容でファブリコンへ、また現在設立作業を進めている新会社への出向を考えている。……今後新しい職域を見つけていく必要がある」と言明している。かかる債務者会社の基本的対応は同年五月一三日に開催された臨時労使協議会において、プロテックへの移籍の同意が得られない場合は「雇用維持の最大限の努力はするが、……本店への異動や出向のケースも考えられる」と言明していたことからも、プロテックへの移籍を拒否した債権者を、他の職種への転換、配転、出向などにより雇用を続行することが前提であったし(それが労使間の確認事項であったのである。)、可能だったのである。

このことは同年六月一六日に開催された臨時労使協議会において、債務者会社がプロテックへの「移籍に合意しない場合は、職種転換や出向をお願いすることになる。全体としての労働条件や処遇は変わらないが、労働形態や個々の労働条件は変わることがある」と極めて具体的かつ明瞭に言明していたことからも明らかである。

したがって、川崎工場をプロテック化した時点(昭和六二年一〇月一日時点)において、就業規則に規定している「雇用続行不可能」な事態は存在しなかったのである。現実においても、債務者会社は債権者を本社人事部在籍として「研修」の名目のもとにセースイ工業株式会社において就労させているのである。

(ハ) 以上の事実経緯は、川崎工場のプロテック化が、債務者主張のごとく就業規則に定める「経営規模の縮小」に当たるか否かはしばらく措いても、川崎工場のプロテック化によって、職種転換、配転、出向などにより債権者の雇用の続行が不可能となる事態には至っていなかったことを明らかにしている。

(ニ) 以上の各事実を債務者はことさら無視し、プロテックへの移籍を拒否した債権者に対して、「債権者が移籍に同意しない以上、仕事がなくなるのは当然の結果」であるとし、「債権者には退職を求めてもよかった」と債務者会社の真意をこのように明瞭に露呈している。つまり、債務者会社はプロテックへの移籍を拒否した債権者が従事しうる業務が存在するか否かを事実に即して検討しているといった姿勢は毫もなく、移籍を拒否した債権者に対しては、その報復として「仕事がなくなるのは当然の結果」であり、「退職を求め」たかったのが債務者会社の真意であったのである。

しかし、移籍拒否を理由として解雇はできず、現実に職種転換により債権者の従事できる職種がある以上、債務者会社としては、「人事部に籍を置き、新規の仕事ができるように職業訓練の意味で研修を行わせる」よりほかはなかったのである。

他方、債務者会社はプロテックへの移籍を拒否し、これに反対の運動を行った債権者の行動を「会社の経営施策を故意に妨害する違法不当な行為」であるとして、債権者の正当な組合運動を敵対視していたところから、前記就業規則の適用の歪曲、つまり川崎工場のプロテック化により「雇用続行不可能」の事態が発生したという虚構の解雇理由を組み立てようとしたものである。

(2)(イ) 債務者会社が本件解雇を最終的に決定したという昭和六三年四月二一日の数日ないし一週間前においては、債務者会社において特に「経営規模の縮小」は行われていない。債務者主張の「経営規模の縮小」、即ち川崎工場のプロテック化は既に前年の一〇月に完了し、プロテックの操業に必要な人員は既に移籍してプロテックの従業員として業務に従事している。他方、右移籍を拒否した債権者は、前記労使間の確認に基づいて、本社人事部在籍のもとにファブリコンへ出向し、業務に従事していたものである。

(ロ) 債権者は、債務者会社が本件解雇を最終的に決定した直前において、ファブリコンへの移籍を拒否しているが、このファブリコンへの移籍が就業規則所定の「経営規模の縮小」に当たらないことは債務者も認めているところである。ファブリコンは昭和六一年に設立された会社である。

債務者の主張する「経営規模の縮小」である川崎工場のプロテック化時点においては「雇用続行不可能」の事態は生じていなかった。それから約七か月経過して行われた本件解雇の時点で「雇用続行不可能」な事態を新たに生じさせる「経営規模の縮小」は行われていない。その時点において新たに行われようとしたのは債権者のファブリコンへの移籍しかない。

右ファブリコンへの移籍拒否により何故に突如として「雇用続行不可能」な事態を生じさせる「経営規模の縮小」が存在することとなるのか、また、右拒否によって、何故にそれまで債権者の従事していた職務が突如としてなくなり、「雇用続行不可能」の事態が新たに存在することになるのか、いずれも存在しないこと明らかである。

(ハ) 本件解雇の真の理由は、次のとおりである。

債務者会社は、債権者がプロテック及びファブリコンへの各移籍を拒否したばかりでなく、債権者がその反対運動の先頭に立ち、中心になって行動していたことが許し難かったのである。債務者は、このことをその答弁書において、次のように吐露している。

移籍を拒否した「債権者は、それで二回目ということになる。会社はもはや債権者を解雇するほかないと思わざるを得なかった」。これと、答弁書の「移籍に同意しない以上、仕事がなくなるのは当然」という主張とを照らし合わすとき、債務者会社が債権者を解雇したのは、債権者が移籍を拒否したことによることを明らかにしている。

したがって、債務者は答弁書一〇頁において、「債権者を除くすべての川崎工場勤務の技能職が、賃金の減額を受忍し雇用を選択して移籍に応じたのもかかわらず、移籍を拒否した債権者に配置転換その他の方法をわざわざ講じてまで仕事を探し与えなければならない法律上の義務は、会社にもともとない」、「もしそのようなことをすれば、一旦移籍を同意した者も意をひるがえして会社との雇用継続を主張するに至り、収拾のつかない状態になるのは必至」と主張しているのである。

つまり、債務者会社では、同社の命じた移籍(形式上は本人の同意をとりつけている)を拒否するものは、同社にとって許しがたい存在なのである。それ故債権者を解雇したものである。しかしこのような理由を本件解雇の理由とすることができないので(何故なら移籍に応じるか否かは本人の自由であって強要することはできないものである)、かの就業規則所定の「経営規模の縮小」とこれによって生じる「雇用続行不能」を持ち出してきたのである。

(ニ) また、債務者は、債権者の出向先きでの賃金差額を債務者会社が負担してまで出向させる意思はなく、かくては賃金の三〇パーセント減を受け容れて移籍に応じた他の従業員との公平を失することになるものと主張しているが、これからみると、債務者会社は、債権者に対し他の移籍に応じた従業員と同じ賃金三〇パーセント減での移籍を強要し、債権者がこれを拒否すると、公平を失するとして本件解雇をなすに至ったものである。

債権者としては、かかる労働条件の低下する移籍に応じなければならない義務はなく、これを拒否する自由がある。この自由権を行使したことが公平を失するとして解雇の理由とされることは許されないことである。

(四) 本件解雇当時、債務者会社は配転・出向等の方法により債権者の雇用を継続し得たものである。

(1) 前記のように、債務者会社は昭和六二年一〇月一日時点において、ファブリコンに債権者に適した仕事があると判断し、同日付で債権者をセースイ工業に研修に出し、昭和六三年一月二〇日をもってファブリコンに出向させて就労させていたものである。したがって、同年三月末日時点及びその後においても、ファブリコンに債権者の仕事はあったのである。更に債務者会社にその意思さえあれば、ファブリコン以外にも債権者の出向先きを探し得たのである。問題は、債務者会社が出向という方法で債権者に仕事をさせる意思がなかっただけのことである。

(2) また、出向にこだわらなくとも、配置転換の方法によっても債権者の雇用を継続し得たものである。

債務者会社内においても、従前と同一賃金のままでは債権者のなす仕事はないが、賃金を三〇パーセント減額した条件での仕事があり、この三〇パーセントを債務者会社が負担する能力は十分にあったのであるが、同社にはその意思がなかっただけのことである。

これが「雇用を続行できないとき」に当たらないことは明らかである。

(3) そして、現に債務者会社内には債権者にさせる仕事はあったのである。

例えば、プロジェクト業務部工程課は、川崎工場時代溶断工であった堀川貞男の所属する職場であり、ここは現在、「大幅人員減に伴ない、業務範囲を重点及び異常管理型……に限定せざるを得なくなっている」と、人手不足のため仕事のやり方を変えざるをえない状況に立ち至っているのである。ここに債権者の仕事はあったのである。

また現在、債務者会社の工事現場・検査部・安全衛生部・工事計画課にファブリコンの社員が多数「派遣」されてきている。これらの仕事の一つでも債務者会社は債権者に与えることは可能である(特に工事現場の監督業務)。にもかかわらず、債権者に与えずにファブリコンよりの「派遣」社員で賄っているのは、ひとえに支払うべき賃金が安いからである。こうしてみると、結局のところ、債権者は賃金の三〇パーセントダウンを中心とする企業「合理化」を受け入れなかったから解雇になったことになり、債務者のいう「雇用を続行できないとき」に該当しないことは明らかである。

(4) なお、債務者会社は、昭和六三年二月二日に開催された臨時労使協議会において、労組の「万が一うまくいかなかった場合、川工の提案のときは、千代田グループ内での雇用を考えるとの会社の考え方が示されたが、三社への移籍に関してもこの考えに変りがないことを確認したい」との質問に対し、「当然そうした考えに変りはない。雇用の確保は、第一に考えるべき問題であり、千代田グループ内での雇用を考えていくことが基本である。ただ、そのときにグループ内の企業で受け入れが可能かどうかといった問題は残る」と発言していた。

債務者会社の右発言でも明らかなように、同社は第二次非常時対策終了後も、移籍拒否者につき雇用続行を明言したものであった。かかる点からも債務者がいうところの債権者につき「雇用を続行できない」という就業規則所定の要件が本件解雇において欠落していることは明らかである。

(5) 以上、本件解雇の決断時点ないしは昭和六三年三月末日時点で、「雇用を続行できない」事情になかったことは明白であるから、解雇理由が存在しないことになり、本件解雇は無効ということになる。

(五)(1) 川崎工場をプロテックとして分離・子会社化したことは債務者会社の「経営規模の縮小」に当たらない。即ち、

プロテックの資本金三〇億円は一〇〇パーセント債務者会社からの出資によるものであり、建物等の設備も同社が賃貸しており、プロテックの決算も債務者会社との連結決算であり、かつ主要役員も両社兼任となっている。これらの点からみると、プロテックの実体は依然として債務者会社の一部門を構成しており、別法人格としたものの、債務者会社にとっては何ら「経営規模の縮小」とはなっていない。

少なくとも、かかる別法人格化はその従業員の解雇を正当化できるような「経営規模の縮小」には当たらないものである。

(2) 右川崎工場を分離・子会社化してプロテックに業務移管して従業員を移籍した「第一次非常時対策」はもとより、ファブリコン等に業務の一部を移管して、従業員を出向、後に移籍した「第二次非常時対策」も、いずれもそれまで債務者会社が自からの業務として行っていたものを、プロテック、ファブリコン等に名目上移管し(前者は一部門の全て、後者は一部門の一部)、その業務に従事していた従業員を同時に移籍したものにすぎない。

当該業務の存在、内容、仕事場所、従事する従業員も従前と全く変らず、変ったことはその会社名と従業員の労働条件が大幅にダウンしたことだけである。プロテックにしろ、ファブリコンにしろ、資本面でも、人事面でも完全に債務者会社の支配下にあり、経済的には債務者会社そのものである。

要するに、労働条件の引き下げが行われただけであり、債務者会社はこれを実現するために移籍という形式を利用したにすぎない。かかる労働条件の引下げを二度にわたって拒否した債権者を解雇したのが本件解雇であって、就業規則所定の解雇事由は存在しない。

(六) そもそも移籍は、労働契約内容の一方当事者の変更であるから、当事者間の合意がなければなし得ないものである。このことは債務者会社も従来から言明していたところである。そうだとすれば、この移籍拒否行為が解雇の理由となり得ないことは明らかである。それにもかかわらず、債務者会社が本件解雇をなすに至ったのは、債務者会社の重要な「合理化」施策の重要な柱である移籍を二度にわたって拒否したばかりでなく、同僚に働きかけて反対運動を行った債権者に対する報復と見せしめのためである。

(不当労働行為)

本件解雇は、次のとおりのものであって、労組法七条一号所定の不当労働行為であり、無効なものである。

プロテックへの移籍の条件は賃金の三〇パーセント減や一日の労働時間二四分延長など労働者にとっては極めて過酷なものであった。また「第二次非常時対策」と称して提案されたファブリコン等への移籍を前提にした出向及び「職務開発休職制度」なるものも、労働者にとっては過酷きわまる一方的ないわゆる「合理化」案であった。殊に「休職制度」は、移籍拒否者や高齢者及び債権者らのような活動家を対象者として、退職強要の手段として設けられたものである。即ち休職中の賃金は平均賃金の六〇パーセント、賞与もなしというものであり、それが嫌であれば子会社であるアローヒューマンリソース株式会社に登録し、派遣労働者となれというものである(その場合でも賃金は九〇パーセントとなる)。このような一方的な企業の合理化施策に対し、労働者として反対し、その阻止運動を組織して活動することは「正当な組合活動」というべきである。

債権者は二次にわたる「移籍合理化」反対闘争の中心として活動し、特に第二次移籍合理化反対闘争において「ストップする会」を結成し、その代表としてさまざまな活動を展開した。また仮処分申請をなし、債務者会社の第二次「合理化」施策に法的手段に訴えて反対した。この債権者を中心とした移籍合理化反対闘争の高まりのなかで、債務者会社は「合理化」施策の主要な柱として提案した「職務開発休職制度」の撤回を余儀なくされ、これから更に「合理化」を押し進めようとしていた債務者会社は大きな打撃を受けることとなった。

これまで債権者の組合活動を嫌悪し、何とか債務者会社から排除しようと企図してさまざまな画策をしてきたものの、あくまで移籍に同意せず、債務者会社で働くことを要求し、かつ同僚に反対運動に立ち上るよう活動する債権者に対し、債務者会社はこれ以上「合理化」施策の障害となる者を社内に留めて置くことはできないと判断し、右諸活動に対する報復措置として、かつ債務者会社の合理化施策に抵抗する者は首になるのだという見せしめのために、本件解雇を強行したものである。

したがって、債務者会社は前記の就業規則や労働協約に定める解雇事由がないにもかかわらず、これをあると強弁して、本件解雇を強行したものである。

(解雇権の濫用)

本件解雇は、以上のような経緯によりなされたものであり、正当な解雇事由のない解雇で権利の濫用で無効である。

(労働協約違反)

本件解雇は労働協約に違反し無効である。

(一) 債務者会社の債権者に対する昭和六三年四月二一日の解雇の意思表示は、労働協約七七条に定める労働組合との反復協議義務に違反するものである。

労働協約七七条は「会社は前条により組合員を解雇するときは、原則として三〇日前に本人に予告し、組合に対して次の手続きをふまなければならない。」として、「(3)第8号によるとき一か月前までにその氏名、理由および条件を通知し、組合と反復協議する。」と定めている。同条は、組合員に対して確定的な解雇の意思表示をする三〇日前までに、本人に対して「解雇することになるかも知れない」という意味での「解雇の予告」をし、解雇する必要があるかも含めて労働組合と反復協議することを定めていると、解釈される。

したがって、当然に、三〇日前に本人に通告されるものは、確定的な解雇の意思表示であってはならず、単なる「解雇の予告」でなければならない。その単なる「解雇の予告」が先行して、労働組合との反復協議を経てから、しかる後に確定的な解雇の意思表示がされねばならない。

ところが本件では、債権者に対して、昭和六三年四月二一日に労働基準法に基づく確定的な解雇の意思表示をなし、その後に労働組合との協議を開始しているのであるから、明らかに労働協約第七七条に定められた右の手続きを履行していない、無効な意思表示である。

債務者は、昭和六三年四月二一日の通告は、労働基準法に基づく解雇の意思表示ではなく、労働協約第七七条の単なる「解雇の予告」であったと主張するが、債務者会社の発行する「日報」の中で債権者に対して「五月二〇日付けで解雇する旨、予告いたしました。」とし、その根拠条項として、解雇理由を示す根拠条項たる就業規則を明示すると同時にこれと並んで、解雇手続きを定める根拠条項として労働基準法二〇条一項を掲げている。

これは昭和六三年四月二一日の通告が、労働基準法に基づく解雇の意思表示であったことを自白するものである。そして右日報の内容を見ても、債権者に対する解雇は既に確定的であるとの内容になっており、解雇するか否かを含めて労働組合と協議することを前提とした、労働協約七七条の単なる「解雇の予告」とは明らかに異なっている。債権者に加えられた債務者会社の態度も、昭和六三年五月二〇日に至れば、自動的に解雇となることを前提としたものであった。

(二) 債務者会社の債権者に対する同年五月二〇日の解雇の意思表示も労働協約七七条に定める労働組合との反復協議義務に違反するものである。

右解雇の意思表示は、先きの同年四月二一日の解雇の意思表示の瑕疵を取り繕うためになされた、まやかしのものであって、労働組合との反復協議を尽くしていないものである。

五  債権者の主張に対する認否

1  債権者の不当労働行為の主張は争う。

本件解雇は、あくまでも前記のとおり就業規則二二条一項七号(労働協約七六条八号)に基づくものであって、債権者の組合活動とは無関係のものである。

2  債権者の権利濫用の主張は争う。

3  債権者の労働協約違反の主張は争う。

本件解雇の手続は前記債務者の主張(被保全権利の不存在)3において主張のとおりであり、本件解雇につき、債務者会社と組合との協議が打切りとなったのは、組合が「現在のような状況における労使協議は終了とせざるを得ないと考えている」として明確に協議打切りの意思を表明したことによるものである。

第三証拠《省略》

理由

一  本件仮処分申請の利益の存否について

債務者は、債権者が本件仮処分申請をした(昭和六三年五月一一日であることは本件記録上明らかである。)後、同年五月三〇日に本件解雇が不当労働行為であるとして、本件仮処分事件におけると同一の救済を神奈川県地方労働委員会に申し立て、これが同委員会昭和六三年(不)第八号事件として受理されたが、このように同一案件について司法裁判所と行政機関の二つの国家機関に対し救済を求めることができるとすることは一般市民に比し、労働者が不当に優遇される結果となり、法の下の平等を定めた憲法一四条に違反するもので許されず、債権者が労働委員会に対し前記救済申立てをしたことにより、本件仮処分申請はその申請の利益を欠くに至り、却下すべきであると主張するが、民事訴訟法が仮処分制度を、労働組合法が不当労働行為救済制度をそれぞれ設けて、前者は司法裁判所が、後者は行政機関である労働委員会がそれぞれの制度の趣旨・目的に従って国民の権利・利益の救済を図っているものであって、一方の申立てがある場合に他方の申立てが許されないとする定めはなく(例外的に労働組合法二七条六項、七項に若干の制限があるにすぎない。)、また解釈によっても債務者が主張するような制限を肯定するに足りる根拠は見出し難い。

よって、債務者の右主張は理由がなく、採用し難い。

二  被保全権利の存否について

1  申請の理由(被保全権利の存在)1及び2の事実は、債務者において明らかに争わないので、これを自白したものとみなすべきである。

2  《証拠省略》によれば、債務者会社は、債権者に対し、昭和六三年四月二一日、同年五月二〇日付で解雇する旨予告し(疎乙第一八号証)、同年五月二〇日平均賃金の三〇日分金四八万四三〇四円を提供して解雇の意思表示(本件解雇)をした(疎乙第一五号証)ことを一応認めることができ、この認定を覆すに足りる疎明はない。

債権者は、右の昭和六三年四月二一日の意思表示も、労働基準法に基づく確定的な解雇の意思表示であると主張するが、右疎乙第一八号証の記載内容と右疎乙第一五号証との関係をみると、右債権者の主張は認め難い。

3  債務者は、本件解雇は就業規則二二条一項七号(労働協約七六条八号)に基づいて行ったものと主張するので、右に定める解雇の要件に該当する事実があったか否かについて検討する。

(一)  債務者会社に債務者主張のような内容の就業規則二二条のあること、債務者会社と組合との間に債務者主張のような内容の労働協約七六条が締結されていることは当事者間に争いがなく、《証拠省略》と当事者間に争いのない事実によれば、債務者の主張(被保全権利の不存在)2(二)(1)(ア)の事実(但し、債務者の意見に関する部分を除く。)、(イ)の事実(右に同じ。)、2(二)(2)の事実(右に同じ。)をそれぞれ一応認めることができるが、右就業規則二二条一項七号(労働協約七六条八号)による解雇は、「会社が経営規模の縮小を余儀なくされ」たことにつき従業員にその責任があるか否かに関係なく従業員を解雇し得るとするものであるところから、その要件は厳格に解しなければならないものというべく、そして、本件においては債務者会社が「経営規模の縮小を余儀なくされ」たことにつき、債権者には何らの責任がないものであり、また、就業規則二二条一項七号にいう「他の職務への配置転換その他の方法によっても雇用を続行できないとき」解雇し得るとは、「経営規模の縮小」により従業員を解雇するに当たっては、債務者会社としては、これを回避するための最大限の努力をしなければならないものと規定したものと解するを相当とし、債務者会社としてかかる努力を怠るときは右解雇をなし得ないものと解するを相当とする。

(二)  前認定の事実によれば、債務者会社においては川崎工場を分離・子会社化し、これを千代田プロテックとしなければならなかったという「経営規模の縮小を余儀なくされ」ていたこと、債権者に関してみれば、労働条件の低下(主として賃金の三〇パーセント減)はあったものの、千代田プロテックへの移籍、次いでファブリコンへの出向、移籍等債務者会社としては債権者の解雇を避けるための相応の努力をしていたことが一応認められるところであるが、同時に債務者会社の企図した経営規模の縮小=川崎工場の分離・子会社化=千代田プロテック等への移籍については、これを最後まで拒否し続けたのは債権者ただ一人だけで、他は若干名の退職者等を除いて右移籍に応じたことにより、債務者会社としては殆んどその目的を達し得たものということができる。

そうだとすると、前記就業規則所定の解雇要件は右により解消したものといわざるを得ず、それでもなお債権者を解雇するということは、右要件を欠く解雇となるものと認めるを相当とする。

(三)  そもそも、移籍についてはそれが雇用契約の解除と新たな雇用契約の締結であるところから、新契約が従業員にとって有利か不利かにかかわらず、当該従業員の同意(承諾)がなければこれをなし得ず、使用者が一方的になし得るものでないことは債務者も自認しているとおりである。

そうだとすると、移籍に同意せず、これを拒否することは当該従業員の自由であって、このことを理由として当該従業員を不利益に扱うことは許されないものというべきである。まして、移籍による新契約の内容が旧契約に比し、その賃金が三〇パーセントも減少するということであれば、なおさらというべきである。

また、この移籍を組合が了承しているということは、移籍が右のような性質で個別的労働関係の問題、即ち雇用契約の解消と新契約の締結であるところから、それ自体には何らの影響を及ぼすものではなく、せいぜい移籍拒否が組合の決定に従わなかったということでの統制違反の問題となるにすぎないものというべきである。

(四)(1)  債務者は、債務者会社においてできる限り解雇を回避するための努力を続け、債権者に対し移籍の提案をしたのは、債務者会社内には溶接工としての技能職に適した(従来の賃金に見合う)仕事がない以上、移籍に応じない限り解雇せざるを得なかったので、これを回避する目的であったと主張するが、弁論の全趣旨によって一応認められる債務者会社の規模からみて、債権者一人程度を収容し得ないものとは到底認めることができず、また債権者一人を収容したところで債務者会社の経営には何らの支障はないものと一応認めることができる(《証拠判断省略》)。

(2) 債務者は、他の移籍対象従業員が労働条件の低下(主として賃金の三〇パーセント減)を忍んでやむなく移籍に応じているものであるから、同じ移籍対象者であった債権者を移籍もせず、解雇もしないとしたのでは、右移籍に応じた従業員との関係において公平を失するばかりでなく、これらの者が移籍を撤回してくるおそれがあり、かくては債務者会社の所期の目的を達し得なくなるものと主張するが、移籍が前説示のとおりのものであり、また債務者会社の規模が右に認定のとおりのものであれば、右のおそれをもって債権者を解雇し得るものとはいえないと解するを相当とする。

(3) 債務者は、「経営規模の縮小」による解雇は企業の倒産が必至というような場合に限られるものではなく、自由競争下における利潤追求により、不採算部門の廃止と採算部門の拡充が必要不可欠であるから、かかる場合における解雇をなし得るものであると主張し、右解雇が倒産必至の場合に限られるものではないことはその主張のとおりであるが、右解雇が前記(一)において説示のとおり従業員の責任の有無に関係なくなし得るものであるところから、単に一方的な使用者側の事情により容易にこれをなし得るものではなく、より厳しい解雇の要件が要求されるものというべきであり、右債務者の主張は採用し難い。

(五)  以上の検討により、本件解雇については就業規則二二条一項七号(労働協約七六条八号)所定の解雇要件に該当する事実が、債務者会社の努力、他の従業員の理解と協力、更にはその犠牲によって解消した後になされたもので、その効力を生じ得ないものというべきである。

かくして、移籍対象者のうち、債権者一人が債務者会社に残る結果とはなるが、債務者会社としては右の解雇はなし得ないものの、債権者の以上の態度等に対してはそれ相応の評価等をなし得ることはいうまでもないところであり、そのうえで債権者にどのように対応するかは使用者である債務者会社の権限に属するものというべきである。

4  以上のとおりであるから、本件解雇は既に右の点においてその効力を生じ得ないものというべきであるから、爾余の点について判断するまでもなく、債権者と債務者会社との前記1の雇用契約は有効に存在するものというべきである。

よって、本件申請の被保全権利はこれを一応肯認することができる。

三  保全の必要性の存否について

1  申請の理由(保全の必要性)1及び2の事実は、債務者において明らかに争わないので、これを自白したものとみなすべきである。

2(一)  右の事実によれば、債権者もしくは家族において他に収入があるとか、他に十分な資産を有するとか等の特段の事情がない限り、債権者とその家族の生活は債務者会社から得る賃金により維持されているものと認めるを相当とし、本件においては右特段の事情を認めるに足りる疎明はなく、また債権者の平均賃金一か月金四五万七五五七円は、債権者の家族構成、特に二人の子供の年令等を考慮に入れても、なお仮処分による仮払いの額としてはやや多額にすぎるものといえなくもないが、他方において、具体的にどれだけの額を減ずるのが相当であるかについてはこれを肯認すべき疎明がない。

よって、本件申請のうち、右一か月金四五万七五五七円の仮払いを求める部分についてはその必要性があるものと認めるを相当とする。

(二)  債務者は、債権者が移籍に応じていさえすればその生活を維持し得た筈であるところ、これを拒否したがために本件解雇となったものであるから、そのことにより債権者の生活を維持できなくなったとしても、それは債権者が自ら選んだ途であるから、仮処分により保護すべき利益ないし緊急性がないと主張するが、本件の重要な争点が右移籍、本件解雇の適否であるから、右移籍に応じてさえいればという債務者の主張は明らかに理由がないものというべく、採用し難い。

3  債権者は、本案判決の確定に至るまで右の賃金の仮払いを求めているが、本件はあくまでも債権者及びその家族の経済的生活を維持するに必要な限度においてその仮払いを命ずるものであるところ、未だ本案訴訟も提起されていない現時点において本案判決の確定に至るまでの保全の必要性を判断することは到底できず、これを肯認するに足りる疎明もない。そうだとすると、通常であれば本案の第一審判決の言渡しにより被保全権利についても、保全の必要性についてもある程度明確になるとともにこれに従うということもあり得るものということができるので、賃金の仮払いの限度は本案の第一審判決の言渡しに至るまでと定めるのが相当である。

よって、右の限度を超えて仮払いを求める債権者の申請部分はその必要性がないものというべきである。

4  債権者は、債権者が債務者会社との間において雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める旨の申請をしているが、特段の事情の存しない限り従業員には就労請求権が認められないものであるところから、右はいわゆる任意の履行に期待する仮処分であって特段の事情の存しない限り、かかる地位を保全すべき必要性がないものというべきところ、本件においては右のいずれの特段の事情についてもこれを肯認するに足りる疎明がない。

よって、債権者の右申請部分はその保全の必要性がないものというべきである。

四  結論

以上の次第で、本件申請のうち、昭和六三年六月二一日から本案の第一審判決の言渡しに至るまで毎月二〇日限り一か月金四五万七五五七円の割合による賃金の仮払いを求める限度において本件申請は理由があるから、事柄の性質上保証を立てさせることなく認容し、その余の申請部分は、その疎明がなく、その性質上保証をもってこれに代えることは相当でないと認めるので、これを却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 渡邊昭)

〈以下省略〉

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